あの景色の向こう

自由帳

リョウは、地図の片隅に小さな赤い印がついた「絶景」と書かれた場所に向かって、山道を歩いていた。
ごつごつした石を避けながら進むたび、彼の中にあるわけもなく膨らむ期待が重なり、どこか遠いところに連れて行かれるような感覚が彼を包んでいた。

ようやく視界が開け、眼下に広がる景色を目にした瞬間、リョウは一歩も動けなくなった。
深い緑が風に揺られ、遠くで湖が微かに光を反射している。
空は青く広がり、ぽつぽつと浮かぶ雲が流れているだけだった。

胸が締め付けられ、目頭が熱くなるのを感じた。
リョウは景色を見つめたまま、涙が込み上げてくる理由を掴めずにいた。
理屈ではなく、ただその景色が彼の中にしみ込み、何か大切なものに触れているようだった。

幼い頃、父と夜の海に行ったときのことがふいに脳裏に浮かぶ。
浜辺に座り、ただ波の音を聴いていたあの夜の感覚が、今この瞬間に溶け合っている気がした。

風が頬を撫で、彼はふっと息をついた。
その瞬間、景色はただの風景ではなく、彼の記憶と感情が交差する場所として、永遠にそこに存在するように感じられた。


景色が感情に響く理由

ある景色がふいに胸に迫る瞬間があるのは、視覚が感情や記憶を呼び起こすかららしいです。
リョウも、この場所で自分の内側に触れるような感覚を味わっていたのかもしれません。

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