カンガルーと過去

自由帳

ケヴィンは誰よりも高く、遠くへ跳べるカンガルーだった。
強靭な後脚を持つ彼は、毎日広大な平原を自由に飛び回っていた。
だが、ある日ふと気づいた。
自分は常に前に進んでいる、後ろに跳ぶことができないことに。

「どうして僕は後ろに跳べないんだろう?」

その問いは頭から離れなくなった。
前へ進むことはカンガルーにとって当然のことだった。
誰も疑問を持たない。
だが、ケヴィンは違った。
彼は後ろに跳びたかった。
どうしても。

「もし、後ろに跳べたら、今まで見えなかったものが見えるはずだ…」

彼は何度も後ろに跳ぼうとした。
しかし、そのたびに体が不自然に捻れ、地面に転んでしまう。
周りのカンガルーたちは彼を見て笑った。

「ケヴィン、前に跳ぶだけで十分じゃないか。」

だが、ケヴィンは諦めなかった。
森の奥には「跳びの仙人」と呼ばれる存在がいるという噂を聞いた彼は、仙人に会い、後ろに跳ぶ方法を教えてもらおうと決意した。

何日もかけて森を進むうち、ついに仙人の住むという古びた大木にたどり着いた。
そこでケヴィンを待っていたのは、長い白髪をなびかせた老いたカンガルーだった。

「お前は後ろに跳びたいのか?」

仙人は静かに尋ねた。

「そうです。前に跳ぶことはできます。でも後ろに跳べたら、きっと新しい景色が見えると思うんです。」

ケヴィンは真剣に答えた。

仙人は少し微笑み、こう言った。

「お前は後ろを向く必要はない。進むべきは、常に前だ。もし後ろを見たいなら、ただ振り返ればいい。」

その言葉に、ケヴィンはしばらく黙って考えた。
そして気づいた。
彼が探していたのは、後ろに跳ぶ力ではなく、過去を振り返ることの意味だったのだ。

ケヴィンは前を向き直り、再び大地を跳び進んだ。
後ろに跳べなくても、彼には前に進む道がある。
それで十分だと、彼は確信した。


カンガルーの跳躍について

カンガルーは後ろに跳ぶことができないらしいです。
彼らの後脚の構造が前進するために特化していて、後ろに跳ぶのは難しいとか。
でも、カンガルーはその代わりに前方へ大きく跳ぶことで広大な距離を移動できるんだそうです。
後ろを振り返らず、前へ進む力を持っているのかもしれませんね。

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