箱の中の孤独

自由帳

レイは、小さな木箱を見つめていた。
何の変哲もないその箱には、いつも妙な重さがあるように思える。
彼はふたを開けて、箱の中を覗き込んだ。
だが、やはり何もない。
空っぽで、ただの箱の内側が見えるだけだった。

不意に、ふたを閉じたままの方が何かが見える気がして、彼は箱をそっと抱えた。
そして、耳をすます。
何も聞こえない。
ただ自分の鼓動がやけに大きく感じられる。
彼はふたを開け、また閉じた。
繰り返しているうちに、箱にいるのは自分自身なのではないかと、奇妙な気分に襲われる。

「もしや…お前はここにいる?」と、ささやくように箱に問いかけてみた。
何も返事はない。
それでも彼は、空間の向こう側からじっと見られているような感覚に囚われる。
彼は再びふたを開けた。
箱の中には確かに何もいない。
いや、何かがいるのかもしれないが、それは見えてはならない存在なのかもしれなかった。

その不思議な空白の重さは、次第に彼の心の中にも染み渡っていく。
箱の中の何もなさは、彼を見つめ、彼を待っているようだ。
彼はふたを閉じると、次第に静かになっていく周囲の音に耳をすませた。
そして、その静寂の中で、今度は自分が箱の住人になったかのように感じられてならなかった。


見られないものは存在しない?

量子力学の「シュレディンガーの猫」の話では、観察されるまで物体が複数の状態にあるとされるそうです。
レイも、その箱の中で静かな対話を続けていたのかもしれませんね。

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