カレンはビル街を走っていた。
手にしたスマホの地図アプリが示す方向に進んでいるはずなのに、辿り着く先はいつも違う場所だ。
「ここを左…いや、右?」
頭が混乱する。
画面を見ても指示がぐるぐる回っているようで、思考がまとまらない。
歩き続けるが、どうしても同じ角に出る。
何度曲がっても、景色は繰り返すかのように変わらない。
まるで迷路に囚われているようだった。
「ちょっと待って…これ、何?」
カレンのスマホ画面は突如、青い背景に「赤」と書かれた文字、そして赤い背景に「青」と書かれた文字を表示した。
カレンはさらに混乱し、思考が一瞬止まった。
彼女の足も止まり、動かそうとしてもまるで意識が体を裏切るかのように動かない。目
に映る情報と脳の反応が噛み合わない感覚に、カレンは戸惑った。
「もう、どうしたらいいの…?」
彼女は思わず独り言をつぶやいた。
周囲のクラクションが遠くで響いている。
目の前の風景は変わらない、同じ角、同じビル、同じ交差点。
カレンはスマホを握りしめたまま、体を進めようとするが、視覚が告げる矛盾に体が拒否反応を示すかのように、進むべき方向がわからなくなっていた。
ふと、カレンは目を閉じた。
視覚がもたらす混乱をシャットアウトして、ただ深呼吸をする。
目を開かず、周囲の音に耳を傾けて一歩を踏み出す。
足元の感触だけを頼りに、ゆっくりと前に進む。
すると、足は軽くなり、どこかへ向かって歩みを進めることができた。
目を開けた瞬間、彼女が辿り着いた場所には、何もなかった。
ただ、静かに広がる空間があるだけだった。
ストループ効果について
色と文字が矛盾すると、脳が混乱して反応が遅れる現象があるらしいです。
これを『ストループ効果』と言うそうです。
例えば、赤い文字で『青』と書かれている場合、どちらに従うべきか脳が迷い、処理が遅くなるとか。
私たちの脳は、案外簡単に混乱するものなんですね。

