雨上がりの風景

自由帳

雨が止んで、街には静寂が戻っていた。
タカシはふと公園に足を運び、いつものベンチに腰を下ろした。
空気は透き通り、木々や草が息をするように湿った匂いを漂わせている。
けれど、今日はいつもと違う。
その香りに、何か秘密が含まれているような気がした。

タカシはゆっくりと息を吸い込んだ。
湿った土や草の香り、木々から滴り落ちる水滴の音、そして風に混ざるどこか懐かしい匂い。
それは彼を知らない場所へ連れて行ってくれるかのようだった。
目を閉じると、周りの景色が溶け込むように感じられる。
匂いが深く染み込んで、時間がゆっくりと流れ始めた。

「あれは…どこから来るんだろう?」

タカシは小さな囁きのような感覚を抱きながら、その香りに包まれていた。
土の中から、遠い記憶を引き寄せるような、不思議な香りが広がる。
雨がやんで間もないこの空気は、日常にほんの少しの異質な時間をもたらしていた。

気がつくと、彼はずっとそこに座っていた。
空は明るくなり、木々の葉は瑞々しく光り始めている。
けれど、その香りがかすかに漂い続けている限り、タカシは動こうとしなかった。
雨が止んで生まれた、ほんのひとときのこの世界を、ずっとそのまま感じていたかった。


雨上がりの独特な香りについて

雨が上がった後に感じる特有の香りには「ペトリコール」という名前があるらしいです。植物や土壌の物質が雨によって解き放たれることで、あの雨の後の空気が生まれるんだとか。タカシも、自然が放つその瞬間の香りを感じ取っていたのかもしれませんね。

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