夜風が湖面を撫で、木々の間を通り抜けていた。
水面に浮かぶ月の光は、静かに揺らいでいる。
彼女はその風景を見つめながら、ふと目を細めた。
遠く、森の奥に微かな光が瞬く。
それは星でも月でもなく、何か生きているもののようだった。
足音を忍ばせ、彼女はその光に近づいた。
光は薄く、掴みどころがない。
それが消えかけたかと思うと、再び現れる。
まるで彼女を導くかのように、森の中で踊っているようだった。
「今日はどこまで連れて行ってくれるの?」彼女は、自然と問いかけた。
返事があるはずもないが、その光はまるで応えるかのように、また揺らめいた。
彼女が一歩足を踏み出すごとに、光は森の奥へと逃げる。
葉の隙間から射す月光が、木々の影を濃くした。
光はその影の中をすり抜け、時折、彼女のすぐ近くにちらりと現れては消える。
手を伸ばしても届かない。
まるで、風そのものが光を生み出しているようだった。
やがて、彼女は森の奥深くに辿り着いた。
そこには、湖とは違う静けさがあった。
風も音も、すべてが消えたかのような空間。
彼女は立ち止まり、光を見つめた。
光は最後にひとつ瞬き、そして消えた。
「また、明日も会えるかな?」
彼女は問いかけたが、答えはなかった。
湖畔に戻ると、すべてが元通りになっていた。
静寂の中、星々が彼女を見守るように瞬いているだけだった。
ホタルの光のダンス
ホタルは光で会話しているらしいです。
彼らは特定のリズムで光を点滅させ、仲間とのコミュニケーションを取っているのだとか。

