静寂の夢路

自由帳

庭はひんやりとして、湿った空気が彼の頬をかすめていく。
足元の草が彼を誘うようにざわめき、その視線の先には、小さなカタツムリがいた。
葉の上をじわり、じわりと、まるで世界がその背中に乗っているかのように重々しく進んでいる。

彼は目を細め、その動きをしばらく追いかけた。
カタツムリが辿る道は細く、それでいて無限に続くかのようだった。
その小さな生命は、何を急ぐこともなく、ただ確かに前へ進んでいく。
だが、ふと気づいた。
もしかしたら、カタツムリは今、この瞬間も夢の中にいるのかもしれないと。

夢を見ながら動き続ける。
そんなことが、ありうるだろうか?

彼はその場にしゃがみ込み、カタツムリの歩みを見守る。
庭の静寂はどんどんと深まり、風すら息をひそめているようだった。
その中で、彼の心は、カタツムリと同じリズムを刻んでいるように感じられた。
どこかで時が止まり、世界がゆっくりと夢の中へと吸い込まれていく。

カタツムリは静かに前に進んでいる。
ただそれだけ。
しかし、その歩みには、何かしらの秘密が隠されているような気がしてならない。
彼は、まるで自分がその秘密に近づいているかのような錯覚に陥っていた。

「長い夢を見ているんだろうか」と彼はつぶやいた。
声は風に消え、カタツムリはその言葉に応えることなく、また一歩を踏み出した。
夜が深まるにつれて、空には一つ、また一つと星が輝きだす。
だが、カタツムリは気にせず、ただ黙々と、ゆっくりと葉を滑っていた。

その瞬間、彼はふと思った。
もしかしたら、彼らの眠りは世界のどこかで永遠に続いているのかもしれない。
目覚めることを忘れたまま、静かに、そして優雅に。


カタツムリの深い眠り

実は、カタツムリは最大3年間も眠り続けることがあるらしいです。
そんなに長い間、どんな夢を見ているのでしょうか?

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