リサが祖父の養蜂場に通い始めたのは、まだ彼女が小さな女の子だった頃。
祖父は、ミツバチたちが忙しなく飛び回る姿を眺めるリサに、蜜を集めるためのダンスについて話してくれた。
「ミツバチは、踊りながら仲間に花の場所を教えるんだよ」と。
祖父の言葉はリサにとって、まるで秘密の呪文のように感じられた。
夏の日々が過ぎ、季節が秋へと移り変わる頃、リサはいつもと違う何かを感じた。
ミツバチたちのダンスが、どこか鈍くなっている。
以前のような活発さが見られない。まるで、彼らが疲れ切っているかのようだった。
リサはその違和感を祖父に伝えた。
「おじいちゃん、どうしてミツバチたちのダンスがこんなにゆっくりになっているの?」
祖父は少し笑いながら、「リサ、それはね、ミツバチたちが次の季節に備えているからなんだよ」と言った。
祖父の目には、何か深い思いが宿っているように見えた。
「花が少なくなる前に、彼らは余分なエネルギーを使わないようにしているんだ。自然は、いつも先を見越しているんだよ。」
リサは祖父の言葉に納得しながらも、どこか切なさを覚えた。
夏の終わりが、何か特別なものを奪っていくような気がしてならなかった。ミツバチたちのダンスも、その一部だと感じたのだ。
ある日、リサは一人で養蜂場に行き、巣箱の前に座り込んだ。
夕暮れ時、空は赤く染まり、風が少し冷たくなっていた。
ミツバチたちの動きは、今やほとんど止まりかけている。
リサは、彼らの最後のダンスを見届けるかのように、その場を離れられなかった。
静寂の中で、リサは何か大切なことを理解したように思った。
ミツバチたちのゆっくりとしたダンスは、自然のリズムに沿った、生きるための知恵なのだ。
彼らはただ生きているのではない。
季節の移ろいに身を任せながら、自分たちの存在を静かに守り続けている。
秋の風が吹き抜ける中、リサは巣箱にそっと手を触れた。
ミツバチたちは静かに巣の中に戻り、次の季節への準備を始めていた。
リサもまた、心の中で新しい季節の訪れを感じ取っていた。
ミツバチたちのリズム
ミツバチのダンスは、季節によって微妙に変化することがあるそうです。
自然と共に生きる彼らの知恵には、私たちにも学ぶべきものがあるのかもしれません。

