彼女の親切なお願い

自由帳

図書館の静寂の中、トモはレポートに追われていた。

周囲の気配が薄れ、ただキーボードの音だけが心地よく響く。
だが、突然の声がそのリズムを壊した。

「すみません…少しお願いがあるんですけど。」

驚いて振り返ると、そこには小柄な女性が立っていた。
彼女は少し困ったような表情を浮かべ、棚の上を指さしている。

「届かなくて…あの本、取ってもらえませんか?」

目の前の本棚には、古びた厚い本がポツンと高い場所に収まっていた。
トモは一瞬ためらったものの、自然と立ち上がってその本を彼女に手渡した。

「ありがとう。助かったわ。」

彼女は照れたように微笑んだ。

「いえ、どういたしまして。」

トモは軽く返して自分の席に戻った。
しかし、レポートに向かおうとしても、彼女の頼みごとが頭の片隅に引っかかっていた。

「何だったんだろう…」

気にしすぎだと思いながらも、どこか温かい感覚が残った。

数日後、再び図書館に行くと、また彼女が同じ席に座っていた。
今度は彼女の方から声をかけてきた。

「この前はありがとう。覚えてる?」

トモは微笑んで頷いた。
彼女の言葉に、再び親しみが芽生えるのを感じた。

「もちろん。あれからどう?」

「おかげで、欲しかった本が読めたわ。」

彼女は小さな声で笑った。

それから二人は話すようになり、毎週のように図書館で会うことが日常になった。
トモはふと、あの小さなお願いが二人を繋げたのだと気づいた。
きっかけは些細だったが、彼女の「お願い」は彼を動かし、彼女に対して特別な感情を抱かせる不思議な力を持っていたのだ。


ベンジャミン・フランクリン効果について

人に親切をお願いすると、その人はあなたに対して好意を抱くようになることがあるらしいです。
これを『ベンジャミン・フランクリン効果』と呼び、フランクリンがかつて、彼を嫌っていた人物に親切を頼むことで友好関係を築いたというエピソードに由来するそうです。
お願いすることも、意外に大切な一歩かもしれませんね。

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