消えた記憶

自由帳

ナオは友人のユウカと、昔の旅行について話していた。

二人で行ったあの旅行は楽しかったはずだ。

しかし、話の途中、ユウカが口にした一言が、ナオの記憶と食い違った。

「ナオ、覚えてる?あの時、迷子になったの。すごく慌ててたんだから!」

迷子?

そんなことあっただろうか。

ナオの頭の中には、旅行中の鮮やかな記憶が浮かんでいる。
だが、迷子になった記憶だけは、どうしても思い出せない。

「そんなこと…あったかな?」

ナオは首を傾げる。

ユウカは笑いながら

「絶対あったよ!私が探して回ったんだから!」

と強く主張する。
彼女の語るその出来事は、あたかも昨日のことのようにリアルだった。

それから数日が経ち、ナオの中で奇妙な感覚が広がっていた。
どうしても覚えていなかったはずの「迷子事件」が、徐々に現実感を帯びてくる。
まるでその記憶が新しく生まれているかのように、ふとした瞬間に頭をよぎる。

「あれ、本当にあったのかも…?」

彼女は次第にその記憶を疑わなくなりつつあった。
自分の中で確かに存在しなかったはずの出来事が、今やまるでそこにあったかのように感じられる。
ナオは混乱し、何が本当だったのか分からなくなっていった。

そしてある晩、ベッドの中で彼女は考えた。

「私の記憶はどこまで正しいんだろう?」

実際に体験したものだけが記憶として残るとは限らないのかもしれない。
その考えが脳裏をよぎりながら、彼女は静かに目を閉じた。


偽の記憶について

人は時折、実際には体験していない出来事を、まるで自分の記憶として思い出すことがあるらしいです。
これを『フォールスメモリ』と呼ぶそうで、他人からの話や映像、経験が自分の記憶と入り混じってしまうことがあるとか。
記憶というのは案外曖昧で、柔軟に変わるものかもしれませんね。

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