羽ばたきの向こう側

自由帳

サトシは、いつも通り公園を歩いていた。

風が冷たく、頬を撫でる感覚が妙に鮮明だった。
耳に入ってくるのは、かすかに響く鳥のさえずりだけ。
目を落とすと、小さな蝶が草むらからふわりと現れた。
白く繊細な羽がゆっくりと舞い上がり、空に溶け込むように消えていった。

蝶が消えたのを見届けるでもなく、彼はそのままいつもの道を歩き続けた。

翌日、サトシはなんとなく窓の外を見た。
いつもと同じ街並みのはずだった。
けれど、街路樹が少し違う場所にあるように感じた。
彼は首をかしげたが、「気のせいだ」と一蹴して、そのまま仕事に向かった。

さらにその翌日、通りを歩いていると、今度は建物の形が変わっていることに気づいた。
ほんの少し、角度が異なって見える。

「そんなこと、あるはずがない」

と頭を振り、違和感をかき消すように歩き続けた。

三日後、サトシは再び公園に戻った。
蝶が消えたあの場所。
見回すと、今度は公園全体がわずかに歪んでいるように感じられた。
木々の位置がずれている。
いや、ずれていたのか。
サトシは立ち尽くし、ただその異変を静かに見つめることしかできなかった。

そのとき、足元にふと目を向けると、あの日と同じ蝶が舞っていた。
羽ばたき一つが、すべてを変えるものなのかもしれない。
サトシはもう、確信が揺らぐことなくその蝶を見つめ続けていた。


バタフライ効果について

小さな出来事が、時間とともに予測できない大きな影響をもたらすことを、バタフライ効果と呼ぶらしいです。
例えば蝶の羽ばたきが、遠くの場所で嵐を引き起こすことがあるとか。
私たちの日常でも、些細な行動が思いがけない結果につながることがあるのかもしれません。

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