ヨウタは大きな段ボール箱をじっと見つめていた。
重厚感のある外装には、何かの家具が描かれている。
説明書を取り出し、一呼吸。
彼はその家具を組み立てるために工具を手にした。
「これが最後の一手か…」
汗ばむ手をタオルで拭きながら、最後のネジを慎重に締める。
箱から出した時はただの板やパーツだったそれが、ヨウタの手によって徐々に形を成していく。
彼は黙々と作業に没頭した。
やがて、家具は完成した。
白い本棚。
少し不安定に見えるが、ヨウタの心は満足感で満ちていた。
だが、何かが違う。
どこか歪んでいる。
棚が微妙に傾いているように見えるが、それでも彼は愛着を感じていた。
「うん、完璧だ。」
ヨウタは微笑んで呟いた。
しかし、その本棚には何冊かの本を置いてみると、どうにも斜めに落ち着かない。
しかし、彼はその不完全ささえも愛おしく思えてきた。
自分で組み立てたこの家具が、完璧である必要はないとさえ感じたのだ。
もしかすると、このちょっとした歪みこそが、この本棚の魅力なのかもしれない。
ヨウタは出来上がった棚に、少しずつ本を並べていった。
1冊、2冊、少しずつ増えていく本を見ながら、彼は胸の奥に沸き上がる喜びを感じた。
この本棚は他のどんな完璧な家具よりも、彼にとって価値があるものだった。
「やっぱり、これでいいんだ。」
自分の手で作り上げたこの家具は、もはやただの棚ではなく、彼の中で特別な存在となっていた。
イケア効果について
自分で組み立てたものには、実際以上に価値を感じる現象があるらしいです。
これを『イケア効果』と呼ぶそうで、少々不完全でも、自分が手をかけたものほど特別に感じることが多いとか。
完璧じゃなくても、愛着が湧くものはあるんですね。

