カズは静かな図書館の一角で、本に意識を集中させようと息をひそめていた。
ページをめくる音さえも、やけに耳障りに響く気がして、なぜか心がそわそわと落ち着かない。
ふと顔を上げると、少し離れた席に小さな女の子が座っていた。
彼女は、何の表情もなく、じっとこちらを見つめている。
カズは不意に緊張が走り、ページの内容が頭に入らなくなった。
けれど視線を逸らしているうちに、彼女はいつの間にかいなくなっていた。
ホッとしたのもつかの間、彼が再び目を本に落とすと、向かいの席に新たな視線を感じた。
今度は年配の男性が、無言でこちらをじっと見つめている。
心臓が早鐘を打つ。
カズは視線を逸らし、別のページに集中しようと試みるが、どうにもその目線が気になって仕方ない。
顔を上げれば、周りにいる他の人たちもみな、無言で彼を見つめていた。
「どうして…?」
図書館全体が、彼に意識を向けているように感じられる。
息を詰め、まるで逃げるように席を立ち、そっと後ろを振り返ると、ガラス越しに彼を見つめ続ける何人もの視線が彼を追っていた。
外に出た瞬間、ほっとした気持ちもつかの間、街の人々の視線までもが一瞬彼に向けられた。
冷や汗が背中を伝い、カズは誰も見ていない場所を探して、そっと歩き去った。
視線が集中を乱す理由
見られていると落ち着かないのは、人間の防御本能によるものらしいです。
カズもその視線の力に飲まれ、心を揺さぶられていたのかもしれませんね。

