存在しない島

自由帳

彼は祖父の書斎で、薄暗いランプの光の中、古びた地図帳を見つけた。
その地図帳は、何世代にもわたって家族に受け継がれてきたもので、無数の手垢がついた革表紙が時の重みを物語っていた。
彼はふと興味を惹かれ、静かにページをめくり始めた。

ふと、一つのページで指が止まった。
そこには、見慣れない島が描かれていた。
「アルカディア」と書かれたその島は、彼の知る限り、どの地図にも存在しない場所だった。
その島が描かれている位置は、海のど真ん中。
無数の航海日誌や地図にも、そのような島の記載はなかった。

「一体、こんな島が…」

彼は思わず声に出した。
何かに引き寄せられるように、その島に指を滑らせた瞬間、目の前の光景が揺らぎ、気を失うように深い眠りに落ちていった。

彼が次に目を覚ましたとき、彼は夢の中で見知らぬ海を航行していた。
小さな帆船に乗り、激しい波に揺られながら、やがて辿り着いたのは、あの地図に描かれていた「アルカディア」だった。
島は静寂に包まれ、緑豊かな森と古代の遺跡が広がっていた。

彼は島を歩き回り、やがて遺跡の奥深くに立つ巨大な石碑を見つけた。
風化した石の表面には、謎めいた文字が刻まれていたが、その文字は読み解けるものではなかった。
彼がその文字を必死に読み取ろうとした瞬間、背後からかすかな声が聞こえた。

「ここに辿り着く者は、少ない…」

振り返ると、長い白髪を持つ老人が静かに立っていた。
老人の目は深い知恵を湛え、まるでこの島そのもののように、悠久の時を見つめているようだった。

「この島はかつて存在したが、今はもう現実にはない。」

老人は彼に語りかけた。

「だが、特別な者の前にはこうして再び姿を現すのだ。」

「でも、どうしてこの島が地図に…?」

彼は問いかけた。

老人は優しく微笑んだ。

「それは、存在しないものを求める者たちのために残された記憶だからだ。この地図を手にした者は、夢の中でこの島へと導かれる。」

彼はその言葉に深い感動を覚えた。
そして、次の瞬間、彼は目を覚ました。
目の前には、あの地図帳が開かれていたが、そこに描かれていたはずの島は消えていた。

「まるで幻だったのか…」

彼は静かに地図帳を閉じた。


存在しない島の謎

一部の古い地図には実在しない島が描かれていたことがあるらしいです。
これらの島は、誤った情報や航海者たちの勘違いによって描かれ、長い間存在すると思われていたんだとか。

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